ジャッキー・マクリーン4枚目のリーダーアルバムです。
1956年から57年にかけてジャッキー・マクリーンは八面六臂の活躍で、56年だけでも12枚のアルバムにまたがる吹き込みです。56年はチャーリー・ミンガスのバンドをやめてジャズ・メッセンジャーズに加わった年です。この時の相棒がトランペットのビル・ハードマンです。
ジャッキー・マクリーンとビル・ハードマンが在籍した当時のジャズ・メッセンジャーズは、メッセンジャーズの暗黒時代と言われることがあります。ハンク・モブレーやリー・モーガン、ウェイン・ショーター時代と比べると小粒な印象は否めませんが、暗黒時代といわれるようなことはありません。この時期ジャズ・メッセンジャーズにヒットアルバムがなかったのが原因ではないでしょうか。ジャッキー・マクリーンの溌剌たるプレイは聴く価値十分です。
さて「JACKIE'S PAL」と題されたこのアルバムは、副題に「INTRODUCING BILL HARDMAN」 となっているとおりトランペットのビル・ハードマンを全面的に引き立てています。アルバム・タイトルももちろんビル・ハードマンのことです。それだけジャッキー・マクリーンはビル・ハードマンのプレイに惹かれていたのでしょう。彼ら二人の交流はジャズ・メッセンジャーズを退団する1958年まで続き、ジャッキー・マクリーンはブルーノート時代へと突入していきます。
演奏ですが、1がジャッキー・マクリーンのオリジナル、2と4がビル・ハードマンのオリジナル、3はマル・ウォルドロンのオリジナル、5はチャーリー・パーカーの有名なオリジナル、6がスタンダードです。しかも6は僕の大好きな曲です。2はジャズ・メッセンジャーズでも演奏されていました。3はマル・ウォルドロンのリーダーアルバム「MAL 1」で演奏されています。4ですがファンキー的な味わいのある曲ですね。
リーダーのジャッキー・マクリーンはとにかく絶好調です。しかもチャーリー・ミンガスのグループをやめられた嬉しさも手伝って快調にソロをとります。ジャッキー・マクリーンというプレーヤーは不思議なプレーヤーですね。音は濁っているし、音程も悪い、決してうまいプレーヤーではありません。しかし一回聴くと忘れられないプレーヤーです。ハードバップの演歌師とでも呼びたい気がします。特にマイナーな曲でのマクリーン節は聴く者をとらえて放さない魅力があります。僕的には3・4あたりが一番マクリーンらしさが出ているのではないかと思っています。
トランペットのビル・ハードマンですが、彼がマイルスの影響を相当受けているのは明らかですね。フレージングもさることながら音色がマイルスにそっくりです。中音域を使いハスキーな音色で吹いています。ただ彼の場合指使いがもたつくというか、スムースなソロとはお世辞にも言えません。はっきり書くとつっかかるフレージングです。マクリーンと似通ったところがあります。しかしこれが不思議と彼の魅力でもあります。B級プレーヤーですが、このプレイにはまるかはまらないかがビル・ハードマンとういうプレーヤーを評価する分岐点になります。
朴訥なトランペットのビル・ハードマンと哀愁のアルトサックス、ジャッキー・マクリーン、二人がお互いに惹かれあったのも分かるような気がします。アルトサックスとトランペットの組み合わせは時にエキセントリックな響きになってしまうところがあるのですが、彼らの場合はその音色もあり耳につくうるささはありません。
マクリーンの激しさとハードマンの朴訥さが丁度あいまってハードバップの一つの典型を聴かせてくれたいます。名コンビと言っても過言ではないでしょう。
またもう一人のジャッキー・マクリーンの相棒、マル・ウォルドロンのモールス信号を思わせるソロと打楽器的な弾き方が丁度良いアクセントになっています。
リズムの二人は当時のマイルスのリズム隊、息もぴったりです。
ジャッキー・マクリーン初期の秀作として推薦します。ハードバップを思い切り楽しんでください。
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