クラウディオ・フィリッピーニのデビュー作をお届けします。イタリアのピアニスト、クラウディオ・フィリッピーニのピアノ・トリオ・アルバムです。
このアルバムをレコメンド作にするにはちょっとだけ勇気がいりました。はっきり言ってしまえばまだ未完成なピアニストだからです。ただ時折見せるセンスの良さにひかれてレコメンド・アルバムにしました。
メーカーから送られてきた試聴盤を聴いたとき最初あんまりピンときませんでした。仕事しながらのせいもあるかと思いますが、2度目に聴いたとき2曲目の「ベサメ・ムーチョ」でオっとなり、6「I FALL IN LOVE TOO EASILY」でホーとなり、8-11でフムフムとなりました。
1を聴くと「なんだオールド・ファッションなピアノだな」でエジェクトを押してしまわれそうです。ソロになるとそれなりの味もあるのですが。
やっぱ2からぜひ聴いてください。意表をついたアレンジです。非常にスローなテンポで展開されます。しかも間をとったソロはなぜか心にしみます。この1曲で僕はこのアルバムに引き込まれたのです。しかもドラムがいいですね。もう少し長い演奏でも良かったんじゃないでしょうか。
6はベサメ・ムーチョと同じスローな展開です。静謐な時の流れを感じる演奏です。このピアニスト、スローナンバーうまいですね。1音1音の間を効果的に使っています。このアルバム、ドラムの録音がうまいのかついシンバルの音に耳がいってしまいます。
8のビリー・ホリデイの愛唱曲「恋の味をご存知ないのね」多くの名演をのこしたこの曲、フィリッピーニは面白いアレンジでスタートします。まるでブルースのような演奏です。ロック風なドラムのアクセントとピアノの絡みが面白いです。9分という長い演奏ですがだれることなく最後まで聴けました。
9はパーカーのオリジナルです。少しオールド・ファンションドなアレンジを使っていますがこのくらいなら許しましょう。11までのスタンダードはなかなかです。
2と7のオリジナルですがあまり印象はありませんでした。7の最後の掛け声はちょっと・・・ですね。
また5ですがこの曲でこのアルバムを見捨てる方もいるんじゃないかと思います。逆にこの演奏にはまる方も。僕はこういったプレイはあまり好きではありません。ほかのスタンダードで良いプレイをしているのに残念な気持ちになりました。
こういった手法から何となくジャッキー・バイアードを思い出してしまいました。彼も4ビートからフリーまでいろんなタイプに順応できるピアニストでした。それだけに器用貧乏ではないですが印象が薄れてしまった感は否めません。
フィリッピーニもまだ迷っているのではないでしょうか。いろんなスタイルをこのアルバムで見せてくれています。それだけに器用貧乏なピアニストで終わらずに芯の通ったピアニストになって欲しいと思います。
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