ヨーロッパの60年代がいかに充実した時代だったか、われわれはその当時の様子はレコードを通
じてしか判断できない。
しかしこのところ復刻される音源を通して知られざるヨーロッパ・ジャズの姿が朧気ながら見えてきた。
特に60年代に吹き込まれたイタリアのジャズには注目すべき作品が数々ある。今回はこの中から60年代イタリア・ジャズの名盤と目される1枚「NIGHT
IN FONORAMA」の紹介である。
冒頭からから聴かれるマイルス・クインテットライクなサウンドが当時の状況を よく物語っている。この5人の若者たちにとってもマイルスは特別の存在だったのだろう。
1曲目はどうも自然発生的に作られた曲を収録したようである。全員がソロをわける典型的なハードバップ・セッションだが、マイルスを体験した彼らの新しさ(当時のジャズシーンとして)といったものが単なるハードバップ・セッションにしてはいない。
2曲目のダンドレアのトリオは独特のまで綴られる彼のソロが新鮮だ。曲調はハードバピッシュだが、エヴァンスから抜け出ようとする姿がみられる。
全体を通してバルビエリが素晴らしい。もろにコルトレーンライクな音とプレイスタイルだが、その真摯なプレイと緊張感がこのクインテット全体を締めている。
この後バルビエリはフリーに突き進み、70年代突如フォルクローレを融合させた独特のアルバムをリリースして僕らを驚かせた。僕自身はこの当時のバルビエリをあまりかっていない。
彼は映画「ラスト・タンゴ・イン・パリ」のテーマ音楽でグラミー賞を取りそちらの方が有名かも。
トランペットのアンブロゼッティはこのメンバーの中では一番保守的かもしれない。かなりハード・バップよりのプレイだ。ただクリフォード・ブラウンを現代化したようなブリリアントなソロが瑞々しい。
ベースのジオバンニ・トマソ、現在のイタリアいやヨーロッパを代表する名ベーシスト。彼の哀愁のあるプレイはまだ見せないが、ポール・チェンバースとサム・ジョーンズを足して2で割ったようなソロが微笑ましい。
リーダーのフランコ・トナニ、イタリアの人気ドラマー。この当時様々なセッションに参加する。若手のリーダ格といったところ。
当時若手だった彼らにとって録音する機会がそうあったとも思えないが、少ないチャンスにかける意気込みと情熱がほとばしるような素晴らしい演奏である。
やはりマイルス関連5・6が収録されている。短いが5のステラ・バイ・スターライトがベストトラック。
レコード発売当時未発表だった7・8が一番モードよりの演奏なのが皮肉だ。
このアルバム録音の4ヶ月後、ウエイン・ショーターを加えてマイルスが ベルリン・ジャズ・フェスティバルに出演する。ハード・ドライビングなプレイを彼ら5人はどんな思いで聴いたのだろう。興味は尽きない。
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